◎ 沖政裕治さん(平成18[2006]年3月修了)より

★「行動力」 

 私と広島大学との出会いは一通の電子メールを出したことから始まりました。フランスの哲学者アンリ・ベルクソン(1859-1941)の哲学を本格的に研究したいと考えていた私は,ある先生宛に大学院入学についてメールで相談したのでした。先生とは何の面識もありませんでしたが,お返事をいただき,後に指導教授を引き受けていただきました。

 私がお世話になった仏文教室は肩のこらない自由な気風でした。何よりも素晴らしいのが先生方と学生との距離が近いことです。些細な問題でも気兼ねなく相談することができました。コーヒーを飲みながらフランスの料理や風俗の話をきいたり,「ペタンク」という日本でいえばゲートボールに似たスポーツをしたり,書物とは違うフランスを知ることができたのも大きな喜びでした。

 私が学生生活で心がけていたのは「行動に移す」ということです。自分から動かなければ,何の成長もないまま大学生活が終わってしまうことを学部時代に知ったからでした。

 授業以外にも他学部の先生と毎週ベルクソンの読書会を行い,また仏文研究会の実行委員長も引き受けました。

 もちろん,「行動」がすぐに「成功」するとは限りません。就職活動では失敗の連続でした。しかし,私は行動する前に悩むのではなく,失敗してから考えるよう心がけました。その結果,連敗続きだった私も最後には内定をいただくことができました。

 今から思えば,面識のない先生に思い切ってメールを出したのも一つの「行動」でした。今の自分があるのもこの「行動」があるからこそです。今後も,失敗を恐れず今以上に積極的に行動していきたいと思います。

 修了に際して,多くのことを学ぶチャンスをくださった先生方,友人,家族に感謝いたします。

【Muta Mail Magazine】 No.115(2006/03/16 広島大学)より転載

◎ 下垣(藤岡)章子さん(平成9[1997]年3月卒業)より

仏文教室での4年間、優しく熱意にあふれた先生方からは、フランス語やフランス文学を奥深く、そして幅広く、学ぶことができました。仏文のみんなとは、美術や映画、食べ物!!など、フランスに関わるたくさんのことを語り合いながら、自由で心地よい時間を過ごしました。

わたしは卒業後、公務員になり、文学とははなれた仕事をしていますが、フランス語が必要になることも時々あります。フランスへの情熱もあいかわらずさめることなく、少しづつフランス語を学び直しながら、訪れるたびに静かな幸福を実感させてくれるフランスに再会できる日を待っています。仲間たちもまた、仏文教室で学んだことをそれぞれの道に生かし活躍しています。

もしも仏文を専攻していなければ・・・、フランスに行くこともなく、歴史を重ねた街並みを歩くこともなく、素晴らしい芸術を堪能することもなく・・・、わたしのアンテナはもっと小さくて、自分にとって貴重な「なにか」を発見する喜びをこんなにもあじわえていなかったような気がします。

これから教室で学ぶ皆さんが、フランスという国からたくさんの掘り出し物を見つけて、豊かな大学生活を送ってくださることを願っています。

Bon courage!! Bonne chance!!

◎ 武藤(小畑)千英さん(平成6[1994]年3月卒業)より

《久しぶりの文学部》
 歩くと床が軋み、風が吹くと窓ガラスがビリビリ震える木造の学び舎。秋には、台風で倒壊するのではないかと心配し、冬には隙間風が入るため、コートを着たまま授業を受けたこともあったーーーと書くといつの時代の話かと思われるかもしれませんが、これは、私が平成2年からの4年間を過ごした文学部旧校舎でのことです。広島市の東千田町にあった愛すべき建物は、キャンパスの移転とともに姿を消してしまいました。卒業した年の夏に立ち寄ったときには、すでに取り壊され、跡地に草が伸びているのを見て、巣を壊された鳥のようなさびしさを味わいました。
 あれから、12年。東広島市に移った「母校」を、先月、訪ねました。広大な敷地に建つ瀟洒な建物に、私は馴染みがありません。よそ者には眩しく見え、中に入るのに気後れしました。ところが、仏文研究室に一歩入ると、ふわりと学生時代に舞い戻りました。書架に並ぶ本の背表紙も、独特のにおいも、先生たちの笑顔も、あの頃のままです。「そういえば、片道2時間の通学時間に授業の予習をしたなあ。フランス文学の原書と仏和辞典を膝に乗せて電車に揺られていたら、うっかり、乗り過ごしてしまったこともあったっけ。」作中人物に魅せられて、その心を読み解くことに夢中だった頃のことがよみがえってきました。
 卒業後、私は、キャスターになりました。ニュースをわかりやすく伝えるためには、事件・事故の当事者の行動や、現象の裏側にある人間の心理に思いを馳せることが欠かせません。また、インタビューでは、相手に寄り添ったり、注意深く観察したりしながら、言葉を一つ一つ引き出していきます。10年間の仕事は、人の心に迫ることの連続でした。
 このたび文学部を訪れたのは、その経験を皆さんの前でお話しするためでした。はっと気づかされました。仕事の原点、いえ、私の原点は、ここ、文学部にあったのだと。人の心を探求する学問は、思いがけないところで実を結び、人生を豊かにしてくれます。広島大学文学部で学んだことが、これからどんな「贈り物」を届けてくれるのだろう。学び舎に立ち帰って、気持ちを新たにしました。

リテラ友の会 メールマガジン」 No.5(2005年7月号)より転載

◎ 頼 順子さん(平成6[1994]年3月卒業,平成9[1997]年3月博士課程前期修了)より
≪ Fay ce que vouldras ≫
 大学で「フランス文学」や「フランス語学」を学ぶと,将来どのような職業につくことが出来るのでしょうか。大学での勉強を直接生かすとなれば,フランス語の通訳,翻訳家,語学教師,フランス文学研究者などが考えられるでしょうか。残念ながら,実際にこうした職業につける人は,そう多くはありません。
 けれども、「フランス語学」や「フランス文学」は,じつはフランス,西欧,あるいは旧植民地も含めたフランス語圏などの文化の一部分にすぎません。視野を広げれば,さまざまな可能性が開けてくると思います。大学を離れても,何らかのかたちでフランス文化とかかわりを持ち続けている卒業生は少なくありません。私は修了後,古書店に就職して洋書の輸入関連業務に携わり,現在は大学院で西洋史を学んでいますが,仏語仏文学教室での8年間なくして今の自分はなかったと思っています。皆さんも,まずはフランス文学やフランス語学を学んで,「私のフランス」探しを始めてみませんか。≪ Fay ce que vouldras ≫(「欲することをなせ」)です。

◎ 原野 葉子さん(平成11[1999]年3月卒業)より
(仏文教室の思い出)
★ 仏文教室とソルボンヌとの提携制度を利用して,パリで学んだ経験は,わたしにとってかけがえのない財産になりました。皆さんも,二度とない大学生活,その一年間をフランスで過ごしてみませんか?
★ ファッション,グルメ,アート,だけじゃない! 
仏文専攻では,中世の宮廷風恋愛詩から,お馴染みの『星の王子様』,さらには英語化の波に直面するフランス語の現状まで,フランス文化に関する幅広い教養を身につけることができます。仏文教室で培ったグローバルなものの見方,そしてフランス語の実践力は,日々の暮らしに役立つだけでなく,人生を彩り豊かにしてくれました。
★ 仏文の授業でいちばん印象に残っているのは,講義というよりもまるでグループ・レッスンのような,あたたかく自由な雰囲気です。日本人の先生方だけでなく,フランス人の先生にも臆せずどんどん質問の手を挙げることができる,そんな環境のおかげで,使えるフランス語が身についたのはもちろんのこと,興味のあった映画や文学理論,そしてフランス現代文学についての知識を,納得ゆくまで深めることができました。